猫背矯正ベルトの効果について

 世間には様々な姿勢矯正グッズがありますが、中でも一番人気なのは猫背矯正ベルトでしょう。インターネットで調べると沢山の類似品のある事がわかりますが、背中をゴムバンド等で固定するという基本的な仕組みは共通のようです。

 身につけるだけで姿勢矯正のできる手軽さが魅力の猫背矯正ベルトですが、実際の所、矯正の効果はどれほど期待できるのでしょうか。ここでは、猫背矯正ベルトの使い方とその有効性について紹介していきます。

猫背矯正ベルト
目 次

猫背矯正ベルトによる矯正の仕組み

 まずは、猫背矯正ベルトの働きと仕組みについてを解説していきます。でもその前に、一旦悪い姿勢になると自然には元に戻らない理由ついて簡単に解説します。そうする事で猫背矯正ベルトの働きについてより理解が深まるからです。

 悪い姿勢が自然に元に戻らないのは、姿勢が硬く固定されているからなのですが、その固定している構造を、多くの方はだと何となく考えている場合が多いようです。

 しかし、もし本当に骨が固まっているのであれば、外科手術でもしないかぎり矯正は不可能になってしまいます。ですから骨が固まっているわけではありません。

 悪い姿勢を硬く固めているのは、骨と骨をつなぐ組織である筋肉・靭帯・腱なのです。

 これは、人間をゴムで結ばれた棒人形に例えて考えるとわかりやすいです。

姿勢棒人形
人体をゴム人形に例える

 この人形は、結ばれたゴムによって姿勢を維持していると考えて下さい。ですから人形を支えるゴムが収縮すると、それに合わせて姿勢も変化します。もちろんゴムには弾力がありますから、何もしなければ自然に元の姿勢にもどります。

 しかし、もしこのゴムの弾力が失われたらどうなるでしょうか。姿勢は硬く固定した状態になってしまうはずです。

人形の姿勢は固定

 この人形のゴムに相当するのが、人間の筋肉・靭帯・腱というわけです。

 つまり、姿勢を矯正するには、何らかの方法で筋肉・腱・靭帯をもとの状態に戻す必要があります。

 では猫背矯正ベルトでは、どのような仕組みでそれを行うのでしょうか。

 猫背矯正ベルトを身に着けると、ベルトの張力により背中を伸びた状態のまま固定する事ができます。

 つまり、疑似的に背中をストレッチして、筋肉・腱・靭帯を正常な状態に戻す事ができるのです。

 では実際、どの程度の効果があるのでしょうか。次はそれについて考えてみましよう。

エクササイズと組み合わせて矯正しよう

 猫背矯正ベルトの矯正効果はどの程度なのでしょうか。

 最初に結論を言うと、残念ながら猫背矯正ベルト単体での矯正効果はあまり高くありません。

 実際私の治療室でも、猫背矯正ベルトを使われていた方にお話を聞くと、効果はあまりなかったと話される方がほとんどです。ですから、猫背矯正ベルトだけで姿勢矯正を行うのは少し難しいと思います。

 猫背矯正ベルト単体での矯正が難しい理由は大きく3つあります。一つづつ簡単に紹介しましょう。

ストレッチする力が弱い

 一つはストレッチする力が弱い事です。悪い姿勢を固めている靭帯・腱はからだの深部にある為、伸ばすにはそれなりの工夫と力を必要とします。

 しかし猫背矯正ベルトには、からだの動きを制限しすぎないよう一定の柔軟性がなければいけません。その為、どうしてもストレッチする力が不足してしまうのです。

変形しているのは背中だけではない。

 猫背矯正ベルトは丸まった背中を伸ばす為の矯正具です。しかし、悪い姿勢になる事で変形するのは背中だけではありません。下の写真をご覧下さい。

悪い姿勢と正しい姿勢の形の違い

 上図は、猫背姿勢(うすい緑)と正しい姿勢(グレー)を重ねた画像です。重なっている部分を見ると、かたちの異なる部分は背中だけではなく全身にある事がわかります。

 特に肩から後頭部にかけては背中に次いで大きく変形する部分です。こういった背中以外の変形に対して猫背矯正ベルトの効果は皆無です。

姿勢を正す動作を覚えられない

 悪い姿勢であった期間が長くなると、その悪い姿勢を正常な姿勢だとからだは誤認識するようになります。そのような場合、改めて「姿勢を正す動作」を覚えなければいけません。

 しかし猫背矯正ベルトには「動き」を覚える効果はありません。その為、このようなケースには対応できないのです。


 以上、猫背矯正ベルトだけでは矯正が難しい理由を紹介しました。しかし、だからといって矯正をあきらめる必要はありません。矯正法を組み合わせればよいのです。

 猫背矯正ベルトの矯正力不足を補うには、エクササイズと組み合わせて行うのがお勧めです。

 エクササイズと組み合わせる事で、足りないストレッチ効果を補う事ができます。又、自分でからだを動かすエクササイズには、「姿勢を正す動作」を学習できるという他にはないメリットもあります。

 このように猫背矯正ベルトにエクササイズを組み合わせて行う事で、お互いの弱点をおぎなう事が可能となるのです。

 ちなみに行うエクササイズは以下で紹介しているものがおすすめです。

猫背矯正ベルトのメリット

 ここまでの解説だけ読むと、猫背矯正ベルトに肯定的ではないかのように思われるかもしれませんが、猫背矯正ベルトには他にないメリットもあります。

 猫背矯正ベルトは、悪い姿勢になる事を防ぐ予防効果が高いのです。

 特にだらしのない座り方のクセのある方は、猫背矯正ベルトをする事で、その座り方そのものを出来ないようにする事ができます。

 具体的には、座り作業の開始から一時間、又は作業後半の一時間程度、猫背矯正ベルトをつけるようにします。そうする事でクセを改善して、さらなる姿勢悪化を予防する事が出来るのです。

 注意点は、こまめに取り外しをする事です。そうする事で筋力低下を防ぐ(詳しくは後述します)だけでなく、悪い座りクセを認識しやすくなります。

猫背矯正ベルトを使用する注意点

 猫背矯正ベルトを用いる場合、注意しなくてはいけない点が二つあります。使ってみようと考えている方は必ず確認しておきましょう。

1. 筋力低下に注意

 人間のからだには「働いていないと急速に衰える」という性質があるのはご存じでしょうか。

 例えば、骨折などをしてギブスをした時、それが短期間であっても固定されていた部位が痩せ衰えてしまう場合のある事は、どこかで聞いたことがあるかもしれません。これはギブスが患部を固定するだけでなく筋肉の働きも兼ねてしまう事が原因です。

 同様に、猫背矯正ベルトも背筋の働きを兼ねてしまう場合があり、姿勢を支える筋肉が急速に衰えてしまう場合があります。その結果、より姿勢が悪くなってしまう場合があるのです。

 特に子供に使用する場合に注意が必要です。

 子供の姿勢悪化の大きな要因の一つは、からだを支える筋肉の発達が弱い事です。そのような子供は背中が丸いだけでなく、お腹を突き出してみぞおちをへこませた特徴的な姿勢になる場合があります。

筋力不足による典型的な悪い姿勢の形
みぞおちをへこませて背中を丸めた筋力不足による典型的な悪い姿勢

 それは一見すると典型的な猫背に見えますので、猫背矯正ベルトの使用が適しているように思えますが、この場合は逆効果になりますので注意が必要です。

2. 背中の動きを制限しすぎないよう注意

 猫背矯正ベルトは、背中の「かたち」を固定する装具ですが、同時に背中の「動き」も固定してしまう弱点があります。

 その為、ベルトを強く締めつけて長期間使い続けると、肋骨や背骨の動きが固まってしまい、胸全体が癒合したようにカチコチに固まってしまう場合があります。

からだが硬くなる

  実際、このようなケースの患者さんが私の治療室にも来られた事があります。30代の女性でしたが、子供の頃に猫背矯正ベルトをかなり強めに長期間装着したままでいたために、背中全体がカチコチに固まり、肩こりや背部痛に悩まされているだけでなく、呼吸も浅くなり息苦しさにも悩まされるようになってしまいました。

 昔と比べて最近の商品は安全性の高い仕組みになっていますから、ここまで酷いケースは最近見ませんが、商品の安全制限を超えて使用すれば可能性はありますので、注意してください。


以上注意点をまとめると、以下のようになります。

 猫背矯正ベルトを使用する時は「着脱をこまめに行い」、「強く締め付けすぎない」ようにしましよう。

まとめ

 最後にポイントのまとめです。

  • 猫背矯正ベルト単体での姿勢矯正効果はあまり期待しない方が良い。エクササイズと組み合わせると効果的。
  • 悪い姿勢にならない予防効果は十分期待できる。
  • 長時間使用し続けると、筋力が低下してより姿勢が崩れる事も。特に子供に使用する場合は注意。
  • ベルトを締め付けすぎると、肋骨と背骨が固着して背中がカチカチになってしまうリスクがある。ベルトの締め付けは強くしすぎない事。
目 次
閉じる