矯正の難しい猫背

tora

質問のお手紙が届いていますよ。

mike

はい、どのような?

???

 猫背で悩んでいます。今までさまざまな矯正方法を試しましたが、あまり改善されません。最近通った整体院では「あなたの猫背は矯正できない」と言われました。矯正できない猫背もあるのでしょうか。

tora

確か猫背には二種類あって、矯正の難しい猫背と簡単な猫背があるんだっけ?

mike

その事も含めてご質問にお答えしていきましょう。

目 次

猫背の矯正を難しくする要素

 私自身は、病的なものでないかぎり矯正できない猫背はないと考えています。しかし、矯正の難しい猫背があるのは事実です。

 悪い姿勢になる主な原因は、一日中座ったまま背中を丸めている習慣や、毎日長時間スマートフォンをのぞき込む習慣などの、日々の生活習慣にあります。その習慣に最適な状態に筋肉や靭帯が少しずつ短縮して、いずれ骨格を固定してしまう為に姿勢が崩れてしまうのです。

 つまり多くの場合、筋肉や靭帯などの周辺組織が硬化する事で悪い姿勢は形成されています。

 このような靭帯や筋肉の硬化だけが原因であるならば、矯正が困難になる事はほとんどありません。

 しかし骨格そのものの変形が関与していると、矯正はとたんに難しくなります。

 骨格の変形はストレッチ程度の力で元の状態に戻すのは困難です。その為、どうしても矯正が困難になる場合が多いのです。

 猫背の矯正を困難にする骨格の変形には代表的に以下の二つがあります。

  • 胸の背骨のくさび変形
  • 胸郭(きょうかく)の圧縮変形

 次にこれらを個別に詳しく解説していまきしょう。

胸の背骨のくさび変形

 猫背の変形といえば丸い背中ですが、実は正しい姿勢であっても背中は真っすぐなわけではなく、適度な丸みがあるのが通常です。

正しい姿勢
上図は正しい姿勢。背中に適度な丸みがある事がわかる。

 この自然な丸みを作っているのが、胸の背骨です。胸の背骨は横から見るとわずかにくさび形(台形)をしています。

 このくさびの形が複数つながる事で、正しい姿勢における自然な背中の丸みが形成されているのです。

胸の背骨のくさび形
図左の背骨の前部分に注目。わずかに台形(くさび形)になっている。

 しかし、まれに生まれつき背骨のくさびの形が強い場合があります。

胸の背骨のくさび形が強いと猫背になる

 上図は、背骨のくさびの形が強い場合(右)と、そうでない場合(左)を比較した模式図です。くさびの形が強いと背中の丸みは強まり、それだけで猫背になってしまう事がわかります。

 このような生まれつきの骨格の問題を抱えている場合、どうしても矯正は困難になります。

 ちなみに、高齢の方が突然背中が丸くなってしまうのもこれに似た原因です。老化により骨が弱まると、背骨が上下につぶれる骨折がおきる場合があります(圧迫骨折)。そうなると骨折した背骨のくさびの形が強まる結果となり、背中が大きく丸まってしまうのです。

胸郭が上下に圧縮される

 背中を構成する骨は背骨だけではなく、胸全体を覆っている肋骨も含まれています。肋骨は背骨と結合している骨で、胸全体を覆っています。

肋骨

 この肋骨で覆われた部位を胸郭(きょうかく)といいます。

肋骨
図中のピンク色が肋骨で形成された胸郭

 肋骨は背骨と連結していますから、背中が丸まれば当然胸郭の形にも影響が及びます。

胸郭の変形
左)正しい姿勢 右)猫背。
猫背になると肋骨が上下に圧縮される。

 上図は、背骨が丸まるのに連動して胸郭がどのように変形するのかを示した図です。

 左の正しい姿勢では、肋骨の間には適度なすきまがあります。しかし、右のように背骨が丸まると、それに連動して肋骨の隙間が狭まり、胸郭が上下に圧縮されるように変形してしまうのです。

 この胸郭の変形が骨格にまで及ぶかどうかは、猫背になった時期によって決定されます。

 猫背になった時期が成人になってからである場合は、すでに肋骨を含めた全身の骨格は成熟していますから、肋間の組織が短縮するだけで骨格の変形まで及ぶ場合はまれです。

 しかし、猫背になった時期が骨格の未発達な幼少期である場合は、その発達の過程で肋骨の形そのものまで変形してしまう場合があります。

 肋骨の変形は、それに接続している背骨の動きも固定してしまう為、矯正が困難になりやすいのです。

 又、漏斗胸(ろうとむね)などの先天的な変形がある場合も同様に矯正を困難にする場合があります。

矯正の困難な猫背かどうか判断するには

mike

以上、猫背の矯正を困難にする二つの要素を紹介しました。

tora

つまり、骨にまで変形が及んでいると、矯正は難しくなるって事か。
でも、そうであるかどうかはどうやって判断するの?

mike

確実ではありませんが、猫背の見た目からある程度判断する事ができます。

 猫背の変形が骨格にまで及んでいるかどうかは、ある程度その見た目から判断する事ができます。

 猫背にはおおまかに分けて二つの種類があります。一つは、肩から首にかけてが丸くなるくび猫背姿勢(下図右)、もう一つは背中全体の丸い言葉通りの猫背姿勢(下図左)です。

猫背姿勢とくび猫背姿勢画像
矯正が難しいのは、左の背中全体の丸い猫背

 この二つの内、骨格の変形が伴っている可能性が高いのは、後者の背中全体の丸い猫背です。

  背中全体が丸く見えるという事は、猫背の変形が背中全体に及んでいるという事を意味します。つまり、背骨のくさび変形が関わっている可能性が高いのです。

 一方、くび猫背は、首から肩にかけての変形が中心です。背中全体が変形しているわけではありませんので、背骨のくさび変形との関わりはあまり考えられません。

 胸郭の変形も同様で、背中全体の丸い猫背は肋骨全体に影響する為、変形が強まる傾向があります。

 以上のような理由で、猫背の変形が背中全体に及んでいる場合は、骨格の変形が関与している可能性が高いと考えられます。

 しかし、それはあくまで可能性が高いというだけで、必ずしもそうであるとは言えません。本当に矯正が困難かどうかは、実際に矯正してみるまでわからないのが実情です。

矯正の不可能な猫背はあるのか

tora

矯正の難しい猫背がある事はわかったけど、そうだとわかったら矯正は諦めたほうがいいのかな?

mike

いえ、そんな事はありません。あくまで通常より困難であるというだけで、頑張れば矯正できます。

 以上解説したように、矯正が困難な猫背は確かにあります。

 しかし、だからいって、矯正が不可能というわけではありません。

猫背矯正例
左)背中全体の丸い猫背例 右)矯正後の写真

 上の写真は、筆者の治療室における背中全体の丸い猫背の矯正例です。左の矯正前の写真を見ると、背中全体がかなり丸く変形している事がわかります。実際に施術をしてみると、変形は骨格にまで及んでいると想定されました。

 しかしそれでも右の矯正後の写真を見ると、しっかり矯正されている事がわかると思います。このように矯正困難な猫背であっても、矯正が不可能というわけではないのです。

 とは言え、矯正期間は通常より長くなる傾向はあります。ちなみに写真の方は一年近くかかりました。又、骨格の変形が強い場合は、半分程度までしか矯正できない場合もあります。

 しかし半分程度の矯正でも、見た目の印象もかなり良くなりますし、姿勢に関わる症状はほぼ改善します。そう考えれば、チャレンジしてみる価値は十分あると思います。

 これを読んでいる人の中には「自分の猫背は矯正できないんだ」とあきらめている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、正しい方法で根気よく矯正を続ければ、どれだけ悪い猫背であっても、ある程度は矯正する事ができます。是非矯正にチャレンジしてみてください。

まとめ

tora

やっぱり姿勢矯正は一筋縄にはいかない場合もあるんだなぁ。

mike

確かにそうですが、矯正困難なケースは猫背全体の二割以下ですから、あまり最初から心配する必要はないと思います。
でも明らかに骨格から変形していると自分でわかる場合は、最初から矯正治療を受ける事を検討した方が良いかもしれません。

最後にポイントをまとめましょう。

  • 変形が骨格にまで及んでいると、猫背の矯正は困難になりやすい。
  • 猫背と関係する骨格の変形には、背骨のくさび変形と、胸郭の圧縮変形がある。
  • 漏斗胸・圧迫骨折などの問題がある場合も矯正は困難になりやすい。
  • 見た目に背中全体の丸い猫背であるならば矯正が困難になる可能性は高い。しかし、実際には矯正をしてみるまで確実な事はわからない。
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